携帯を取りだし、カタカタと文章を作る。
友人の親のせいで僕の親が死にました。
どうすべきですか?
自分では答えがわからず、ネットの掲示板に書き込む。
リアルで最大の理解者である両親を失った僕には今頼れる人はいない。
「ふぅ…」
溜め息をつき、携帯を閉じる。
「みんなおはようー」
大月 結那が教室に入ってきた。
あいつのせいで……
………………
…………
……
結那とは幼い頃からの知り合いだ。
小さな頃、両親に連れてこられたパーティー会場で、僕は退屈にしていた。
両親は仕事の話か、次から次へと挨拶回りをしていた。
「つまんない」
そういう僕を母は困った顔で我慢しなさいという。
「やぁ、小鳥遊さん、先日は…」
また一人やってきた。
長くなるのだろう。
「トイレ」
母に呟き僕は抜け出した。
トイレは口実だ。
とにかく、抜け出したかった。
会場を出ると、広い廊下には綺麗な花が飾られていた。
「かわいそうに」
この日のパーティーのために飾られた花。
でも、そんな花には誰も見ていない。
「せめて死ぬなら、一番綺麗な状態で…」
僕はまだ蕾のところに手をかざす。
蕾はゆっくり開き、咲いた状態になった。
「凄いっ、今のどうやったの?」
咄嗟に手を下ろし、振り返ると一人の女の子がいた。
それが大月結那だった。
………………
…………
……
「小鳥遊さ、ちょっといい?」
不良の女子グループの一人がニヤニヤしながら話しかけてくる。
あぁ、なんてくだらないんだ。
「はいはい……」
廊下に出ると、数人に囲まれ、壁に追い詰められる。
「アンタさ、最近調子に乗ってない?」
「その眼帯とか何なの? もう一ヶ月以上つけてるじゃん」
「キャラ作りかもねー」
ゲラゲラ笑いながら、眼帯に手を掛ける。
抵抗はしない、どうせものもらいか何かだと思っているのだろう。
「えっ……」
「わっ」
「これで満足かよ」
黙った不良から眼帯を奪い、席に戻る。
さっきの不良達が気まずそうに教室に戻ってくる。
携帯を取り出し、さっきの書き込みを確認する。
返信などなかった。
ただ自分の今からやることに、他人から背中を押して欲しかっただけかもしれない……
………………
…………
……