「いいから、ここで待ってて」
緋色はわかりやすい。
恐らく私の誕生日プレゼントでも買いに行くのだろう。
「かわいいなぁ、緋色は……」
緋色と出会って間もないが、私は心を惹かれていた。
今まで出会ったことない、タイプの人間だからだ。
それに同い年なのに、一人暮らしをしている。
最初のうちは憧れだった。
ただの憧れだったはずなのに……
「やぁ……」
「へっ、あっ」
不意に話しかけられて、間抜けな声が出る。
「日向……?」
半年ぐらい前に、日向の両親は自殺した。
それ以来、パパが日向に関わるなと言っていた。
私は励ましたかったが、パパの顔が怖かった。
「今日は君の誕生日だったね」
「あ、ありがとう」
「これ、良かったら」
言いつけを破るのは気にしたが、私を祝ってくれているのに無視するのは気分が悪い。
だから、無視せず話すことにした。
差し出されたプレゼントを受け取る。
「開けていい?」
「もちろん」
プレゼントを開けると、小さな香水が入っていた。
「僕、花が好きだからさ、君に合う香りの香水を選んだんだ」
「えっ、ありがとう」
「君との仲が疎遠になっていたから……できればこれを機に……」
やはり日向も気にしているようだ。
私もできるなら日向との関係を戻したい。
緋色と日向と私で遊んだりしたい。
「うん……」
「ちょっと手を出してくれないかな」
私の手から香水を取り、手首に適量ふりかける。
「んー、どれどれ」
手首を鼻に近づけた。
甘い香りで、頭がぼぉーと……
「おやすみ」
「へ……」
もう遅かった。
気づいた時には思考が働かない。
目蓋が重く、身体が逆らえなかった。
咄嗟に手を動かす。
「ひな……た……」
しかし、その手は日向に届くことなく空を切った。
………………
…………
……