「あの子、火が動かせるのよ!」
あー、またあの夢だ。
「もう嫌、我慢の限界よ」
結末は知っている。
私の中でこれも悪夢のうちの一つだ。
「あんな○○○」
ヒステリックな甲高い声と、母親は崩れ泣き出した。
私は、それを黙って見ていた。
………………
…………
……
あれから三日が経った。
気を失っていた私は気づいたら部屋で倒れていた。
結那の生存を確認しようとしたが、不明のままだった。
壊れたアパートにも行ったが、立ち入り禁止になっていて入れなかった。
無気力とはこのことだろうか、もう何もやる気がおきなかった。
「会いたいよ……結那……」
もちろん携帯に何度か連絡はかけたが繋がらなかった。
携帯をぼんやり眺める。
昔の結那とのやりとりを思い出すようにように見る。
「はぁ」
今思い返すと、素っ気ない私に、あそこまでしてくれる人なんていなかった。
それなのに、結那に甘えて、私は……
「わっ」
携帯のバイブに思わず驚く。
携帯の液晶には結那の文字が表示される。
「あっ、えっ」
どうしていいのかわからず思考が止まる。
ニコール、三コールと続き、途切れることはなかった。
深呼吸をして、通話ボタンを押す。
「もしもし、結那?」
『……』
「結那? 結那なの?」
『……』
無言が続く。
通話時間だけが刻々と過ぎていく。
「ねぇ、返事してよ……やだよ……こんなの……」
『……け……』
「えっ?」
何かノイズ混じりの声、ただ声そのものは結那に間違いなかった。
『助けてよっ、緋色っ』
………………
…………
……